「140年の歴史」 教会創立140周年記念礼拝説教
                  ヨハネによる福音書8章1節~11節

                                 牧師 小林 信人
 
 「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、先ず、この女に石を投げなさい」非常に
厳しいお言葉です。できることなら避けて通りたい。そんなお言葉かもしれません。
しかし、私たちは積極的に受け取りたいお言葉です。なぜならば、この言葉ほど、慰めに満ち
溢れたお言葉はないからです。
 「『先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。こういう女は石で打ち殺せと、
モーセは律法の中で命じています。
ところで、あなたはどうお考えになりますか。』イエスを試して、訴える口実を得るために、
こう言ったのである。」
「訴える口実」とあります。これまで、悔い改めと罪の赦しを説いて来たイエスのことだから、
女を憐れんで「赦してやれ」と言うに違いない。
しかしそれは、「石で撃ち殺せ」と命じる律法に対する違反であるから、イエスを罪に定める事
ができる、と彼らは考えたのです。
彼女は罪を犯しました。しかし彼らの本音では、彼女の罪などどうでも良かった。彼らは、
ただ単に、この女性を利用しただけでした。彼女の罪のことを考えるならば、正式な法廷に
連れて行けばいいだけです。本当に醜い人間の姿です。
これが、主イエス・キリストを受け入れようとしない、主イエス・キリストに反発する人間の
姿なのだと、聖書は語るのです。
しかも、姦淫の罪の問題というのは、女性だけを裁いてそれで終わる問題ではありませんでし
た。当該男女が裁かれるべきというのが当時の律法です。
 「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、先ず、この女に石を投げなさい」。人々は
この御言葉に言い逆らうことが出来ませんでした。その通りと認めるほかありませんでした。
ここにいた人たちも私たちと同様、この主のお言葉が胸にぐさりと突き刺さったのであります。
人々はわが身を省みました。そしてすべての人が、自分は降りなければならないと気がついた
のです。急に恥ずかしくなり、一人去り、二人去りして、そこからすべての人がいなくなり
ました。
これはしかし、彼らが自らの罪に向き合った結果です。主のお言葉によって、彼らは罪に向き
合うことができたのです。年長者から始まってと語られているのがなんとも生々しい語られ方
です。
ここに教会を重ねるならば、10周年の教会より、140周年の教会の方が罪は多いという事に
なりますし、早く退場しなければならないという事になります。
しかし忘れてならないのは、私たちの教会の歴史は罪の歴史であると同時に、赦しの歴史だ
という事です。私たちの教会は、140年間、主からの罪の指摘を受けつつ、同時に、罪の赦しの
宣言を聴き続ける事が出来ており、これからもその歴史を重ねていくのです。
ここに教会の歴史の貴さがあります。
もちろん、やはり罪は犯してはならないのです。罪の赦しの宣言を聞くために罪を犯すことを
主は奨励されているのではありません。主は言われます。「今後はもう罪を犯すな」。十字架上
からのお言葉として私たちはこの言葉を聞くのです。
教会の歴史は、十字架のもとでの歴史です。戻る


2022年冬号 2022年12月25日発行 第65号